東西問わず名品は名品 ~里帰りの話~

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どこにあっても美しいものは美しいし、名品は名品である。高級品が集まるオークションに参加したとき、その美しさに圧倒された陶器があった。

恐る恐るそのカップをかざし、メーカー名を確かめてがくぜんとした。「NORITAKEMADEINJAPAN」とある。

抱え込むようにしてカップを手に入れ、その宝石のように美しい陶器のルーツを調べてみた。何と百年以上も前に日本から輸出されたものであった。

コーヒーや紅茶を飲む習慣が一般的でなかった当時、洋風の絵付け、金盛りの技法を駆使した完ぺきと言っていい豪華な磁器が、既に日本からヨーロッパに輸出されていたのだ。

西欧人の東洋趣味にこたえた作品ではない。物珍しさで勝負したのではなく、堂々と品物の質と出来栄えで勝負して認められたのである。マリナーズのイチローのようなものだ。

輸出用に生産されたオールドノリタケは、その5パーセントが英国向けであったという。

そして、いいものを大切にする英国人の手で守られ、百年の年月を経ていま「里帰り」をし、日本の愛好家の手でいとおしまれている。

アンティークに魅せられたからといって、西洋骨とうだけがいいと言う気はない。いいものはいいし、名品は国境を越えて名品である。

ちょっと事情の違う里帰りもある。明治の初め、北海道の原野から切り出されたミズナラの原木が大量に英国に輸出され、英国の古家具の主材料になっているらしい。と考えれば、テーブルやいすのたぐいの古家具もまた、形を変えて日本に里帰りしたとも言える。

これらの古家具が日本の四季にうまく適応するのは、もともと日本生まれの素材のせいかもしれない。

Mr.K (Ksアンティーク 川口宗彦)

※写真はイメージです。(ただし、この品物も輸出用に生産されたOLD NORITAKEです。)