歴史の重さ 〜時の経過が価値増やす〜

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わたしたち日本人が生涯の夢である家を建てる場合、その完成の日を100パーセントとして、年月を経過するにつれて減価するという考えに立ち、それを不思議とも思わない。しかし、英国(多分他の欧米の国でも)では古い農家の民家を買い取り、好みに合わせて手を加え、理想の形に作り上げていく。時の経過は減価ではなく、増価の道のりということになる。

心地良い住家を家族が力を合わせてこつこつと作り上げていく。これに勝る楽しい余暇の過ごし方はちょっと考えられない。DIYは単なる趣味ではなく、家の歴史の中に根強く組み込まれているのだろう。

miryoku_10-1さらに注目したいのは、彼らのガーデニングの発想だ。塀で囲んだ「わが家」の庭を美しくしたいという日本人と基本的に違うのは、「わが家」のガーデニングが地域の美観景観の一部を担うべきだという発想だ。個人の庭であり、菜園でありながら、常に社会との調和を目指すこの意識は、成熟した個人主義の表れなのかもしれない。

コーヒーに始まり、アンティークの魅力にとらわれて深入りしてしまった私だが、いずれ私設コーヒーミュージアムを作りたいという夢を持っている。

この夢に英国の友人は共感してくれ、三百年の使用と鑑賞に堪えてきた数々の器具を集めてくれた。たった十ポンド(二百円)のコーヒーばいせん器を百六十キロの道のりを走り、手渡してくれた。私には終生の宝となる物だ。物を大切にし、自然を大切にする英国人のすばらしい気質のあかしであるからだ。

クラフツマン(職人)の作品には、百年後にその価値が認められるという自負がある。大量消費に伴う環境破壊が厳しく反省され、百年、二百年先まで見通して物を大切にするという生活スタイルは、その反省の上に立ったものだろう。

狭い視野、偏った視角からの主張があったと思いますが、紙面をお借りできたことに深く感謝します。

Mr,K (Ksアンティーク 川口宗彦)