のみの市〜知識と眼力駆使し交渉〜

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アンティーク市の朝は早い。
早朝五時ともなれば掘り出し物、目当ての物を求めてプロが行き交う。

英国では数えきれないほどのアンティークフェアが開かれている。
大小合わせれば毎日と言っていいほど、どこかで開かれているが、出店数三千以上の大きな市は月に一度か二度。
フェアの会場は、ゴルフ場がすっぽり入るような草原であったり、牛舎であったり、ときには荘厳な教会であったりする。

どこに会場もにぎわっている。
雨が降っても一向に構わず、目が飛び出るほどの値のテディベアが雨に打たれたまま放置されていたり、年代物の銀のティーポットが無造作に芝の上に並んでいたりする。
高価な美術品、貴重品という感覚はそこにはなく、まさに古物の取引会場である。

その雑多な古物の中から掘り出し物を探り出すのがプロの眼力というもの。
一見ボロのかたまりに見えるテディベア、がらくた家具、すり減って傷だらけの銀器の値を決めるのは眼力であり、古物に関する知識ということになる。

ここに集まるプロたちの目的は、掘り出し物を探すだけではない、むしろ、手持ちの品と相手の品との交換が主であるようだ。
それぞれの手持ちの品は、どこかの小さな村で開かれたオークションで手に入れたもので、そこでも眼力がものをいう。

もともと「モノ」は需要にこたえて生産されるが、アンティークに関する限り、いかに人気の集中しているモノでも、それは既に生産の道は閉ざされている。
顧客の要望にこたえて品ぞろえをするには、こうした会場で業者が互いにモノをトレードしてやりくりするしか道がない。
プロたちは広い会場を歩き回り、知識と眼力だけを頼りに交渉し、折り合いをつける。

そして、このアンティークフェアの盛況を支えているのは、やはりモノをどこまでも大事にするというイギリス人の気質によるものだろう…。

Mr.K (Ksアンティーク  川口宗彦)