物を大切にする精神と、自然を大切にする精神

719EAE50-5C57-4340-B356-4FE5C510DD2A

英国人は総じて恐ろしいほど物を大切にする。
おばあちゃん譲りの魔法瓶のフタだけがいまでも手に入る。

何年か前に買った電気器具が故障しても部品がなく修理できないという日本の事情と比べると、信じられないほどだ。
物を大切にする心を現実的に支える、きめの細かい物流システムがあるということにもなる。

どんな小さな町にでも、日本のコンビニの数ほどのアンティークショップがあるのは、英国人の古物へのこだわりが単なるケチ精神によるものでは説明がつかない。

八月、ピーターラビットで有名なビアトリクス・ポターのヒルトップ農場を訪ねた。
ビアトリクスは、ピーターラビットで得た印税でその地を買い取り、すべてをナショナルトラストに寄贈したのだが、彼女の寄贈したものは、土地を含む景観そのものであった。

受けた側もその趣旨に従い、世界的に有名な観光スポットであるにもかかわらず、土産物店、遊戯場、食べ物屋などという景観を損なうものは一切排除。
自然の景観だけを提供するという、徹底した姿勢を貫いているのには驚嘆した。
もちろんその裏には景観を保護する不断の管理努力があるのは言うまでもない。

いいものは家具であれ、小物であれ、景観であれ、自然であれ、徹底して守り継承するというのが、英国人の気質なのだろう。
そう思って見回すと、英国の自然にも、街にも、家の中にも、個人の持ち物にも、長い年月を経ていい味になったものがずいぶんと目に付く。

英国には、遺言で自分が最も愛した景観の地にベンチを寄贈するという習いがあるらしい。
ベンチには寄贈者の名が刻まれ、ベンチが朽ち果てるまでその場に残されるという。

物を大切にする精神とは、自然を大切にする精神と結び付く。

Mr.K (Ks アンティーク  川口宗彦)